囲炉裏(イロリ)
昔の囲炉裏(イロリ)があります。
There is a traditional old fashioned Japanese living room.
【火棚】
格子状に組まれた木の枠で、イロリの上につり下げます。その上にぬれたワラグツなどを置いて乾かしたり、魚や穀物をつるし乾燥保存させるなど幅広く利用しました。
A wooden grid and frame, hung over the hearth. It was used for drying straw, grain, fish, and many other things.
【みそ玉】
柔らかく煮た大豆をつぶして丸めたもの。火棚に下げて乾燥させます。
Miso Ball. Boiled soy beans were mashed and formed into a ball. They were left to dry on the hearth rack.
【鉄瓶(てつびん)】
鉤(かぎ)などにかけて、お湯を沸かします。
Hung from a hook, Iron Kettle was used to boil water.
【ごとく】
イロリの中で鉄瓶を立てた鉄製の輪。
An iron ring was a stand for an iron cattle in the fire place.
【わたし】
イロリの灰の中に置かれた鉄製の道具。上に餅などをのせて焼きました。
This iron grate was placed inside the hearth. Mochi,sticky rice cake and other foods were cooked on top.
わらじ作り体験
湯沢町歴史民俗資料館「雪国館」で、平成27年の8月中に4日間、わらじ作り体験を開催しています。9日(日)に8名、16日(日)に6名の合計14名が参加し、そのうち10名が小学生で、ワラを初めて触ったという子どもがほとんどでした。
湯沢町在住の小林守雄さん(84)が講師を務め、ヒモで結んで足に固定する履き物の「わらじ」を作り上げます。作り始めと仕上げは難しいので小林さんが行い、参加者はワラの編み込みを行います。作業は片足分のみで、所要時間は30分から1時間ほど。片足分がお土産としてつくので、両足分を持ち帰られます。
希望により、「足半(あしなか)」に変更も可能です。かかと部分が無く、足の半分くらいの大きさの「ぞうり」なので、簡単に出来上がり、道具を使うので作りやすいのです。仕上げるとき、鼻緒になるヒモを引っ張ると、かかと部分がクルッと絞られて、あっという間に形が出来上がります。参加者や見学者からは、「わあ、すごい」「なるほど」など、驚きの声が上ります。
小林さんは「わら細工を作る、ということに意義がある。必ず形になるので、気軽に参加してもらいたい」と話しています。
今後は、22日(土)、29日(土)を予定。体験料金は700円。別途、入館料(大人500円)が必要ですが、8月31日(月)まで子ども料金が無料です。受付時間は、午前10時から午後2時まで。予約がなくてもできますが、予約優先です。電話:025‐784‐3965
※終了しました。ありがとうございました!
赤ちゃんを入れる「つぐら」
年配の方は「なつかしい」「私も入っていた」と言い、知らない人は「ええ~、ほんと?」と言うのが、赤ちゃんを入れる「つぐら」です。昔は、首のすわった乳児を、「つぐら」というカゴの中に入れていました。
赤ちゃんだけ家に残して外仕事をするときなど、ちょっと大きくなっても、つぐらに入れたんだそうです。
昔は使っていたと言うおじいさんに、「赤ちゃん、嫌がったりしませんでしたか?」と聞いてみたら、「嫌がったって、入れたさ。仕事になんねえもん」とのことでした。
入れ方は、こんなかんじです。まず、ワラのシビ(小さいケバ。やわらかい)を敷き詰めます。
次に、赤ちゃんをぐるぐる巻きに包んで、入れます。
赤ちゃんの周りの空間に布を敷き詰めます。
差しこんでるかんじですね…。「身動きとれなくて、かわいそうですね」と言うと、「今だったら、虐待だなんて、言われるかもなあ」と、おじいさん。「でも、外仕事はたくさんあるし、真夏なんかは背負ったら暑くて、もっとかわいそうでしょう。家の中だって、イロリがあったり、土間に落ちたりしたら危ない。かわいそうでも、こうしておくしかなかったんだよなあ」と言いました。
民具と農具
民具(生活に必要な道具)や農具(畑や田んぼの仕事などをするときに使う道具)を、春夏秋冬に分けて展示しています。
春は、田植えの季節です。「田植え枠」「抜根機」「除草機」などの他、さまざまな「鍬(くわ)」などがあります。
夏は、蚕(かいこ)を育て、繭(まゆ)をとる季節です。蚕とは「カイコガ」の幼虫のことです。蚕が繭をつくって、さなぎになります。この繭を煮て、生糸(きいと)を作ります。それを織って布にして、着物をつくります。
布を織るための「いざりばた」や、ワタから糸をつむぎだしたりする「糸車」、 蚕を入れて繭を作らせる「まぶし」などを展示しています。
秋は収穫の季節です。稲刈りと稲始末(いねしまつ)を行います。稲刈りは、鉄のカマを使って、根元から刈っていきます。刈りとった稲は、束で結んで、干していきます。これを「はざかけ」といいます。今は、機械でかわかすので、あまりしません。昔は、家族全員で稲刈りをしたので、子どもたちは、稲をはこんだり、はざかけするために手渡したりするのが仕事でした。
干しおわると、お米の粒をクキからとっていきます。これを「脱穀(だっこく)」と言います。まずは「稲扱き(いねこき)」です。
「千歯扱き(せんばこき)」は、江戸時代から使われました。稲を刃にかけ、引きながらお米の粒を落としていきます。とても能率があがったそうです。「千歯」は、歯が千枚あることではなくて、「千把(せんば)」と書くことがあります。千把もの稲を一度にこくことができることに由来しているそうですが、やはり、実際に千もあるわけではないようです。それほども、能率が上がったということなのでしょう。
次に、落としたお米の粒をウスに入れてひいて、お米の本体と、そのまわりの殻の「モミ」を別々にします。そして「唐箕(とうみ)」を使って、それらを分けていました。ハンドルを回した風によって、重いもの、軽いもの(つまり欠けたもの)、ゴミというように別れました。
お米の本体は、「玄米」(モミをとっていなくて茶色のままのお米)で、俵につめて、稲作業はようやく終わりでした。1月下旬ころまでかかったそうです。
秋はイネを刈ったり、干したり、脱穀したりと、とてもいそがしく作業をします。いまのように機械がなかったので、ぜんぶが手作業でした。そのぶん、時間がかかりました。雪がふる前に作業をおわらせたいと、天気の心配をしながら行っていたそうです。俵に入れたお米は、背負ったりして持ち運びしました。1俵(いっぴょう)、約60キロもあります。俵を編む道具は、冬のコーナーにあります。使うのは秋でも、つくるのは農作業ができない冬の間なんですね。
冬のコーナーには、雪が多い季節に、どのように工夫して暮らしていたか分かるような道具が展示されています。
下の写真は、大雪の中を歩くための「かんじき」の大型版です。 「すかり」といいます。大きい分、持ち上げる雪の量も多くなるので重くなります。それで、先の方にヒモがついていて、ヒモをひきながら足を上げて歩きました。
イラストのふたりは、このように話しています。「コリャ イライ コッチャナア コレジャア ユウガタ マタ デナクッチャアー ナンナイカナー」「ホンニサ ヨクモ オトヲ タテズニ ホッカイニ フッタモンダ」。→「これは大変なことだなあ。これじゃあ、夕方にまた(雪道づくりに)出なくてはならないかなあ。」「本当にそうだな、よく音もさせないで、こんなに降ったもんだ。」
上の写真は、「すげぼうし」と、それをかぶった子どもたちの写真です。頭から身体まで、すっぽりおおってかぶるもので「つっかぶり」とも言います。昔、使っていたというおじいさんに「いまで言うところのコートでしょうか?」と聞くと、「いや、着るものというより、かぶりものなんだ。あったかくするというより、吹雪の日とか、雪が身体につかないように」ということでした。
わらじ、ワラ布団、つぐら
雪がふると「セッキ仕事」といって、冬の仕事をします。男のひとは「ワラ仕事」、女のひとは「ハリ仕事」をしました。ハリ仕事とは、ぬいもののことです。着るものや、布団などをぬいました。
ワラ仕事は、冬のあいだに1年分のものをつくりました。ひとりが1年間でつかうゾウリは、約100足ほどだったそうです。1カ月にすると約8足、1週間で1~2足ですね。ゾウリは、1日10足つくると「1人前」と言われたそうです。下の写真は、はなおの部分を赤い布で巻いたゾウリです。
下の写真は、ゾウリと同じ作り方の「足半(あしなか)」です。かかとの部分がないゾウリです。かかとが無い分、小さいので早く作られて、ワラも少なくてすんだそうです。それと、はいているときも、かかとが無い分、軽くて動きやすかったようです。
上の写真は「人間用」の「わらじ(ゾウリと同じような形ですが、ひもで足くびを結んで、走ったりしやすい)」です。下の写真は「馬用のわらじ」です。すべり止めと、ツメをまもるためです。馬はツメが割れていないのでこの形ですが、牛の場合は割れているので、人間のわらじと同じ形だそうです。
ワラは、両手でつかんでにぎれるくらいのタバにして、下の写真のような「横づち」という、木でできた「こん棒」でたたきました。ひとつの束で5分くらい、たたいたそうです。そうすることで、ワラのセンイをつぶして、やわらかくしました。ワラたたきは、力はいるけれど、むずかしい仕事ではないので、昔は小学生くらいの子どもの仕事だったそうです。
たたいたワラは、つぎに「すぐり」ます。ケバ(こまかいワラの部分)をとるんですね。その、とったケバを中に入れて、布団にしていました。下の写真のまんなかには、布団がつんであります。ワラ布団は、ワタの布団の上に重ねてしいて寝たそうです。ワラ布団をさわってみると、カサカサっとワラの音がします。かけるのは「夜着(ゆうぎ)」という、大きなソデがついたワタの布団でした。ワラ布団は、あたたかくフカフカして、とっても気持ちがよかったそうです。
ケバは、赤ちゃんを入れるカゴ「つぐら」に入れて、その上に布をしいてから、赤ちゃんをねせたそうです。下の写真が、つぐらです。家の外へも取っ手を持って連れて行ったそうです。田んぼや畑の近くにおいて仕事をすることもあれば、赤ちゃんだけつぐらに入れたまま家において、仕事へ出ることも、よくあったそうです。
「つぐら」は他にも、あります。ごはんがさめないように使われた「めしつぐら」は下の写真。
ネコが入ってねるための「ねこつぐら」もあります。昔、ねこは「ペット」というより、害があるねずみをとってくれるので、大事にされていたそうです。ねこつぐらは、つくるのがとてもむずかしくて、上のところをふさぐのが大変だと言っていました。
つくった人に「ネコって、自分が入るものだってすぐ分かるものですか?」と聞いたら、すぐ入ったそうです。中に入ってバリバリとツメをといでるんだそうです。いいおうちがあっていいですねえ、ネコ。
ワラ細工について
みなさんは「ワラ細工」を見たことがありますか?
まず、「ワラ」とは、何だと思いますか?
「ワラ」とは、おコメをイネからとったあとのクキのことです。1週間から10日ほどの間、刈ったイネを束にして干したあと、脱穀するのです。
束にして干すことを「はざかけ」といいます。下の写真は、昔の子どもたちが、はざかけをしているところです。下にいる子が、はしごにのぼって上にいる子に、投げてわたしたそうです。
ワラを使って作った生活用品が「ワラ細工」です。はきもの(ゾウリなど)、かぶりもの(ミノというかぶりもの)、しきもの(ゴザなど。カーペットみたいなもの)、タワラ(おコメをいれるもの)、ムシロ(木などくるんだりするもの)など、ふだんの生活で使うもの、さまざまです。
いま、ワラはイネ刈りのときに、細かくきざんで、田んぼにまいてしまうのだそうです。ワラが、いらなくなったからです。
どうしてワラがいらなくなったかというと、ポリエスチルやビニールといった、便利で手間のかからない品物が出てきたからです。ですので、今では、ワラ細工を使うことが、ほとんどなくなってしまいました。ワラ細工をふだんから使っていたのは、みなさんのおじいさんやおばあさん、そのおとうさんやおかあさんが、子どものころのことになります。
イネのワラだけではなくて、「スゲ」や「ヒロロ」という草もつかっていました。ワラは水をすいますが、スゲやヒロロは水をすわないので、雨や雪の日に使うとよかったそうです。冬に外で仕事をするとき、下の写真のようなミノを着ました。ワラでつくった「ワラミノ」も雪がふらないところでは使いましたが、下の写真は「スゲミノ」です。
いまはビニールのレインコートなどを着ますが、動いて身体が熱くなると、汗をかいてむれてしまいます。ミノならむれることがなくて、着心地がいいそうです。ただ、草なので、うごいていると、少しずつ、ちぎれてしまうみたいですね。ミノはつくるのがむずかしくて、ひとつつくるのに4日くらいかかるそうです。
スゲは、ワラより弱いのですが、近くに生えている草をとっただけなので、手に入りやすかったそうです。ワラは、牛に食べさせたりもしたので、昔は貴重だったということでした。
囲炉裏について
こちらは、昔の「茶の間」の再現コーナーです。新しく作るためにこわした古い家の、柱や戸などを持って来ています。
茶の間には「囲炉裏(イロリ)」がありました。床をしかく四角に切って開け、灰をしきつめて、薪や炭火などおこすために作られたものです。
イロリの上の天井から「自在鉤(じざいかぎ)」がつるされ、なべをかけて食事を作ったり、やかんをかけてお湯をわかしたりしました。火の上には、「火棚(ひだな)」という木のワクがつるされていて、雪でぬれた、わらのはきものなどをおいて、かわかしました。イロリの火だけでは、なかなかかわかなくて大変だったそうです。
イロリでは、座る場所が決まっていました。座敷(ざしき)を後ろにした「ヨコザ」にはお父さんやおじいさん、スイバン(台所)を後ろにした「カカザ」にはお母さんやおばあさん、ニワ(仕事をする場所)を後ろにした「キタザ」にはお嫁さんやお手伝いさん、「ヨコザ」の左となりは「キャクザ」で、お客さんが座るところでした。
イロリは「ホドガミサマ」という神様がやどる場所とされていました。そのため、いつも「火箸(ひばし)」や「灰ならし」で、きれいにしておくものだといわれたそうです。