昔の暮らしを知ってみよう

歴史民俗資料館で展示している「ワラ細工」などを中心にご紹介します。

ワラ細工の講習 (3)わらぞうり作り

いよいよ、縄から「わらじ」を作ります。

縄は、足の指にひっかけてもいいそうですが、道具を使います。この道具は「どうずり」といい、方言で「怠け者」の意なんだそうです。これを使うと腰が痛くならないし、わらじも、しっかりしまったものができるとのことです。

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 手前が、つま先の部分になります。

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下から上へ・・・とワラを編んでいきます。ワラは、バランスを見ながら足してゆくので、裏はワラが飛び出したりしますが、表がきれいならOK。

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4本の縄の間に、熊手のように指を入れて、形を整えながら編んでゆきます。しかし、どうしても、縮んでしまいがち。きれいに作るのは、とても難しく感じました。左に付けた縄は、鼻緒になります。

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最後に、先生が形を整えてくれ、かかと部分の縄を、ひゅ~っとひっぱって完成しました。このわらぞうりは「足半(あしなか)」といいます。ふつうのわらぞうりの半分くらいの大きさで、戦(いくさ)や農作業など、力のいる仕事をするときに使われていたのだそうです。足の先と、かかとが出ている方が、動きやすい・・・というのですが、もう片足を作ってみて、実際に履いて実感してみたいと思います!

ワラ細工の講習 (2)縄ない

ワラを叩き終わったら、「すぐり」という、根元の葉の要らない部分をとります。でも、今回は作るのが「草履(ぞうり)」なので、すぐらなくてもいいとのこと。

まずは「縄ない」を行います。ワラ細工では、縄ないがとても大切だそうです。「縄ないができねえで、ワラ細工をやろうといったって、だめだな」と先生が言うので、心して始めます。ワラを2~3本ずつ、2束にして持ちます。2束にしたまま、手の平にのせて転がします。それぞれの束をよりながら、交差させていきます。先生の見本は鮮やかで、手をこするだけで、するするするっと縄ができていきます。

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見ているだけだと、とても簡単に見えます。「さ、やってみて」と言われて、ワラをつまんで、手の平にのせて転がしてみるのですが…。あれ~?ワラは手の中で転がって、ただ擦れるだけ。先生は、「転がすんじゃなくて、よっていくんだ。力を少し入れて、手の平を押しつけながらやるんだ。」と言います。頭では分かるのですが、2束を同時による、というのが難しいのです。

しばらく先生の手つきを見ながら、手の中でワラを転がしてみました。

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20分ほどすると、ちょっと分かってきたので、よれたワラを交差して編んでいきました。なんとか、縄のようになってきました。試しにワラを足しながら続けていたら、だいぶ長くできました。「ちょっと歪だけど、まあ、なえてるかな」と言ってもらいました。慣れてくると面白いです。

先生は、縄を足に引っかけてピンと張らせて、タワシのように丸めたワラでこすり、けばを取りました。

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さあ、これで準備ができました。いよいよ、草履を編んでいきます。

ワラ細工の講習 (1)ワラ叩き

ワラ細工を習いに行きました。先生は、83才。教室は、先生のうちの車庫です。雪がある期間の晴れた日がいいというので、2月では珍しく天気がよい日をねらって訪問しました。なぜ雪がある期間がいいかというと、湿気があるときの方が、ワラをあつかいやすいからだそうです。晴れた日がいいのは、外仕事なので、とにかく寒いからです。この日は晴れていましたが、外の風はつめたく、手がかじかみました。「昔は丈夫に作りたいから寒いときに作ったもんだけど、飾る用なら、いつ作ってもいいんだ、本当は」と、先生は言いました。そしたらストーブでも置いて作業をしたいところですが、そこは昔堅気の先生、寒さなんてなんともないという顔でした。

まずは木槌で、束にしたワラを叩きます。ワラを柔らかく、丈夫にするためです。束は、両手で握られるより、ちょっと少なめくらいな量。この写真に写っている、上が叩く前で、下が叩いた後です。

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今はコンクリートの床を使いますが、昔は、ワラ打ち用の石の上で、打ちつけたそうです。先生が木槌を軽々と片手で持ちあげ、ワラの根元から打ちつけました。ゴンッ、ゴンッ、ゴンッと、いい音が鳴ります。

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しばらく手本を見せてくれたあと、変わってもらいました。片手で持ちあげてみると、その重さにびっくり。「えっ、これで打つんですか?ずっと?」

先生は、涼しい顔で「そうだなあ、5分くらいな」と言います。ひえ~、という思いで打ちつけてみると、音が全然、違う。コスッ、コスッ、コスッ。

「…これ、叩けていますかね?」不安になって聞くと、「まあ、いいんじゃねえか」と言われました。しばらくがんばって、コスコス叩いていると、ストップをかけられました。内側の方が柔らかくなるから、全体を同じようにするため、ワラをほどいて、内側と外側を入れ替えるそうです。あまりの重さに辛くなったので、先生が変わってくれました。

「重労働ですねえ」と、ためいき。「暑いときなんて、汗をかきながら叩くね」と言いながら、叩き続けます。昔は、朝に起きると、すぐやる仕事がワラ叩きだったそうです。子どもが手伝う仕事でもあったそうで、小学校にあがるくらいから、やっていたそうです。「遊びに行きたくて、仕事したくなかったりしませんでしたか?」と聞くと、「昔はみんなが仕事していたから、仕事をするのが当たり前だった。したいとかしたくないとか、考えなかったなあ」ということでした。

先生が叩く音は、やっぱりいい音で、力強く生命力があふれているように聞こえました。

昔を知ること

ミノを着てコシキ(除雪道具)を持つ男性と子ども二人


歴史民俗資料館には、昔、使っていた農具(農業をするための道具)や民具(生活用品など)が展示されています。

ここで言う「昔」とは、いま、80才~90才くらいのおじいさんおばあさんが、子どもの頃くらいのことです。(もっと古いものや新しいものもありますが、そのくらいでイメージしてください。)

みなさんは、おじいさんおばあさんに会ったことがない人もいると思います。おじいさんおばあさんの、お父さんお母さんに会ったことがある人は、とても少ないと思います。私も、お父さんのお父さんは、早くに亡くなったので、会ったことがありません。お父さんのお父さんのお父さんにも、会ったことがありません。

でも、会ったことはなくても、必ず存在していたのです。お父さんお母さん、そのまたお父さんお母さん、そのまたお父さんお母さん…、ずっと存在していたから、みなさんも存在するのです。

昔を知ることは、自分について知ることでもある、と思います。ぜひ、昔の暮らしを知ってみてください。