昔の暮らしを知ってみよう

歴史民俗資料館で展示している「ワラ細工」などを中心にご紹介します。

ワラ細工の講習 (1)ワラ叩き

ワラ細工を習いに行きました。先生は、83才。教室は、先生のうちの車庫です。雪がある期間の晴れた日がいいというので、2月では珍しく天気がよい日をねらって訪問しました。なぜ雪がある期間がいいかというと、湿気があるときの方が、ワラをあつかいやすいからだそうです。晴れた日がいいのは、外仕事なので、とにかく寒いからです。この日は晴れていましたが、外の風はつめたく、手がかじかみました。「昔は丈夫に作りたいから寒いときに作ったもんだけど、飾る用なら、いつ作ってもいいんだ、本当は」と、先生は言いました。そしたらストーブでも置いて作業をしたいところですが、そこは昔堅気の先生、寒さなんてなんともないという顔でした。

まずは木槌で、束にしたワラを叩きます。ワラを柔らかく、丈夫にするためです。束は、両手で握られるより、ちょっと少なめくらいな量。この写真に写っている、上が叩く前で、下が叩いた後です。

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今はコンクリートの床を使いますが、昔は、ワラ打ち用の石の上で、打ちつけたそうです。先生が木槌を軽々と片手で持ちあげ、ワラの根元から打ちつけました。ゴンッ、ゴンッ、ゴンッと、いい音が鳴ります。

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しばらく手本を見せてくれたあと、変わってもらいました。片手で持ちあげてみると、その重さにびっくり。「えっ、これで打つんですか?ずっと?」

先生は、涼しい顔で「そうだなあ、5分くらいな」と言います。ひえ~、という思いで打ちつけてみると、音が全然、違う。コスッ、コスッ、コスッ。

「…これ、叩けていますかね?」不安になって聞くと、「まあ、いいんじゃねえか」と言われました。しばらくがんばって、コスコス叩いていると、ストップをかけられました。内側の方が柔らかくなるから、全体を同じようにするため、ワラをほどいて、内側と外側を入れ替えるそうです。あまりの重さに辛くなったので、先生が変わってくれました。

「重労働ですねえ」と、ためいき。「暑いときなんて、汗をかきながら叩くね」と言いながら、叩き続けます。昔は、朝に起きると、すぐやる仕事がワラ叩きだったそうです。子どもが手伝う仕事でもあったそうで、小学校にあがるくらいから、やっていたそうです。「遊びに行きたくて、仕事したくなかったりしませんでしたか?」と聞くと、「昔はみんなが仕事していたから、仕事をするのが当たり前だった。したいとかしたくないとか、考えなかったなあ」ということでした。

先生が叩く音は、やっぱりいい音で、力強く生命力があふれているように聞こえました。