昔の暮らしを知ってみよう

歴史民俗資料館で展示している「ワラ細工」などを中心にご紹介します。

ワラたたき

夏休み期間に3日間、小林守雄さん(85)を講師に、わらじ作り体験を行いました。事前の準備でワラ叩きが大変なので、私もやろうと、ワラ5束を持って小林さん宅へ行きました。

ワラ叩きは、細工しやすいよう柔らかくするためと、ワラの繊維の緻密性と弾力性を増加するために行います。木製の「横槌(よこづち)」で、穂先まで全体に叩く作業。日頃、物を「叩く」ことがあまりないので、難しく感じました。持ち上げた横槌を、ワラに落とすだけの状態になります。小林さんから「暗くなるまでやっても、1束も終わらないなあ」と言われました。

そこで、体勢を変えてやってみたのですが、最初より叩ける感触があるものの、能率は殆ど変わりません。

汗を流しながら叩き続けて約1時間、やっと1束と半分くらいを叩けました。親指の皮がむけ、後日、腕が筋肉痛になりました。

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情けない経験は勉強になりましたが、体験に必要なワラを、どうしましょう。「展示してあった、ワラを潰す機械を使おう」と小林さんが提案しました。

展示品ですか、動くのかなあ。不安に思いながら動かしてみると、小林さんいわく「十分に使える」。持ち上げると、鉄製なので相当な重さでした。

直径約50センチのハンドルをまわし、溝のあるローラーにワラを挟んでいきます。叩くというより、潰しているかんじです。ハンドルを回すには力が要り、ローラーに通したワラは、ワシャワシャと音をたて、かすかに煙を上げました。叩いた後には細かいワラが落ちて、横槌で叩いたのと同じだなと思いました。

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「こんなに便利な機械、もっと早く教えてくださいよ」と小林さんを責めながら、「文明の利器、すごい」と感嘆しました。昔の人も、私と同じように思ったのでしょう。

ワラ叩きは重労働と痛感しましたが、他に「重労働」として何があったのでしょう。小林さんに聞きました。

「物を運ぶのは大変だった。何でも背負って運んだ」

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物とは具体的に何ですか?

「薪用に切った木や、堆肥(たいひ)用に刈った草を、山から背負って降りた。稲は、はざかけする場所まで。嫁入り道具のタンスも背負って運んだ」

木やタンスはともかく、草や稲も重いんですか?

「60キロ近い重さになるまでくくった。その時には、背負い台を使った」

「背負い台」は1メートルほどの長さの木材2本を約25センチ幅で固定した道具。それに物をくくりつけて背負いました。俵などはワラ製の「背中いち」をつけ、肩と背中を保護してから、荷縄で自分の身体に物をくくりつけました。

「昔は、物を運ぶには何でも背負った。背中いちなど、無くてはならない道具だったけど、今の時代には全く必要ないね」と、小林さんは話しました。