昔の暮らしを知ってみよう

歴史民俗資料館で展示している「ワラ細工」などを中心にご紹介します。

民具、ワラ細工

湯沢町歴史民俗資料館「雪国館」には、川端康成の小説『雪国』に関する展示の他、昔の農具や民具がたくさんあります。(ちなみに当館で「昔」と言うとき、大正から昭和初期をイメージしています。その頃の道具が当館には多いからです。)

その頃に生活していた人は、それらを見ると「なつかしい」と言います。私はその頃には生まれていないので、道具を知ることで昔の生活を想像します。それはとても面白いことです。

民具で多いのは、ワラを叩いて縄にしてから編み込む「ワラ細工」。履きものでは、ワラジ、ゾウリ、長ぐつ(湯沢町では「フッコミ」と言います)などがあり、人間用だけでなく馬用のワラジもあります。

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【左から、牛用のワラジ、ワラジ、足半】 ※「牛用」は間違いで「馬用」でした。

当館では体験イベントとして「ワラジ作り」を不定期で開催しています。魚沼市(旧堀之内町)生まれ、現在は湯沢町在住の小林守雄さん(85)が講師。「親に抱っこされて、3才くらいから縄ない(ナワを作ること)をしていた記憶がある」と話している「ワラ細工職人」です。

両親が囲炉裏端(イロリバタ)でワラ仕事をしていたので自然に覚え、「足半(あしなか)」という、かかと部分の無いワラジなら、小学校4年生くらいで作られました。

近所には小学校の分校があり、1~4年生と冬季のみ全学年が通いました。冬季にはワラの長ぐつ、それ以外では足中を履いての通学。雪で濡れると、囲炉裏にかけられた「火棚」の上に置きましたが、あまり乾かなかったそうです。

魚沼市では、ワラの長ぐつを「スッペ」と言いました。湯沢町では「フッコミ」と言い、スッペは爪先を保護するワラジのことです。同じ呼び方なのに、違う土地では別の物になるんですね。

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【左から、フッコミ、スッペ】

昨年、小林さんから当館へ4足のフッコミを寄贈していただきました。大きさを作り変えてもらったので、親子揃って履けます。履く前には「ちくちくしないかなあ」と不安そうな人も、履いてみると気に入って欲しくなったりします。

たくさんのワラ細工を作る小林さんですが、それでも「なかなか思うように出来上がらない」そうです。

「でも、自分が思い描いたように作られる時が、たまにある。そういう時は、ほれぼれするね」

今も、ワラ叩きをしている小林さん宅へは、その独特な音を聞いて訪ねて来る人があります。昔は、村中にワラ叩きの音が響いたのでしょう。想像すれば、その音が聞こえるような気がします。